「少女たちの羅針盤」映画製作の現場から【後編】>第5話

【後 編】
 【前編TOPはこちら】
 第1回「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」で優秀賞を受賞した水生大海さんの小説「少女たちの羅針盤」の映画化が決まり、昨年(2010年)6月末から7月末にかけて、福山市内全域でロケが敢行されました。
 2011年5月14日、映画「少女たちの羅針盤」が、いよいよ全国公開になります。
 広島県内での先行公開に合わせて映画制作に携わった経験を書き綴り、映画公開前日の4月22日で一旦終了したお話ですが、その後各方面から「続けて欲しい」との声を多く頂戴いたしました。
 インターネット上に公開する映画制作物語を熱心に読んでくださっていた方がいらっしゃることを知って、ありがたく思います。 「皆様のご期待に応えて」と言うとおこがましいですが、「好評いただいているのなら」と思い、後編として書き綴ることにいたしました。
 後編では、私が担当した美術スタッフとしてのお話だけでなく、地元支援スタッフチームが結成される以前に関わったことや、制作の現場で起こったことを中心に、当時を思い出しながら。。。
文責:片岡 達樹)
お話のMENU


■第5話■ タテワリと役割分担
update:2011.05.20
 組織を表現するとき、「タテワリ」という言葉を使うことがあります。この「タテワリ」を辞書で調べてみると、「上から下に切り割ること」、「組織が上下関係を中心に運営されること」と書いてあります。

 「タテワリ」は、合理性があり効率良く行動できる構成だと考えられている一方で、組織が縦に割られていることから、グループとグループの間に壁ができ、自分の領域(守備範囲)の中でしか考え行動しないため弊害が生じることも多々あり、このような時も弊害の原因として「タテワリだから」と言う言葉を、良く耳にします。

 映画制作スタッフチームは一つの組織ですが、上下関係を中心に運営されてはいません。しかし、驚くことに、意外にも「タテワリだな」って思える場面に、たびたび遭遇しました。

 例えば、私は美術担当ですから、ロケに使用する場所へ事前に装飾するものを運び込みます。その際には施設の管理者に連絡して了解を得るのですが、この連絡は美術ではなく、「制作の仕事だから」制作スタッフの担当になります。

 美術は「●月●日の●時に●●へ準備に行く」と、スケジュールを制作に伝えます。それを受けて制作は、施設管理者へ連絡し、了解を得るのです。美術の行動なのだから美術が連絡すれば良いのに、、、なんて思ったりするのですが、どうも仕組みが違うみたいです。

 また、このようなことも言っていました。

 美術は「劇中で使用するものを手配することが役目」です。しかし、スタッフが使用する椅子の手配を頼まれることがあり、「それは制作の仕事だろ」って返すそうですが、制作の行動も把握しながら、最後には「まぁ、やっとくよ」って準備することもあるそうです。

 ある日、質問してみました。

 「映画制作の現場は、結構タテワリなんですね」って。すると、こんな言葉が返ってきました。「タテワリではなく、役割分担と言います」とのこと。

 「役割分担」を辞書で調べてみると、「役割を分担し、一人ひとりの負担を軽くすること」と書いてあります。なるほど、これが「役割分担」なんだ。

 数年前、企業の「組織戦略」をテーマにしたセミナーを主催し、原点に立ち返って「組織」というものを考えたことがあります。

 組織がなぜ生まれるかを考えると、確かに「上下関係があるから」と自信満々に大きな声で答えた経営者がいましたが、組織発生の要因はそうではなく、ただ単に「一人でできないから」ということにたどり着きました。

 そのような視点でスタッフの行動を観察していると、自分たちの役割は、当然ですがキッチリと果たしています。しかし、決して他の部門を見ていないわけではなく、「他の部門が仕事をしやすくすること」や「全てのスタッフが仕事の精度を高める」ことも踏まえて、自分たちの役割を果たしていることが解ってきました。

 何度も何度もオールスタッフが集まり、多くの時間を費やすミーティングを繰り返していました。

 情報交換や意思疎通が確立されている組織は、グループごとが異なる動きをしていたとしても、それは「タテワリ」ではなく「役割分担」と表現すべきなのでしょう。

 でも、こんなこともありました。

 ある場所でのロケ。。。制作スタッフは、ロケの打ち合わせで連絡します。美術スタッフは、装飾の関係で連絡します。エキストラスタッフは、エキストラの手配で連絡します。三つの機能がそれぞれの都合でバラバラに動きますので、「一度に言ってこいっ!」て怒られてしまい、関係が悪化する場面も。普通に仕事をしている場所なので、当たり前に考えると、お怒りも当然です。

-------------------------------------------------------
次回 ■第6話■ 女子高生の自転車に悔しさが込み上げる
5月23日月曜日UP予定
【少女たちの羅針盤】
 「羅針盤」という名で注目を集め始めた女子高校生4人の演劇ユニットで起きた事件。事件の真相が4年後、明らかになる。

【関連サイト】

 ・少女たちの羅針盤公式サイト

 ・少女たちの羅針盤公式ブログ

 ・ばらのまち福山ミステリー文学新人賞
  【お問合せ】
   福山商工会議所 TEL:084-921-2345
    cci@fukuyama.or.jp

Copyright(C) Fukuyama Chamber of Commerce and Industry. All Rights Reserved.
当サイトの文章・写真等の無断転載・転用は、禁止します。