国際ビジネス研究会では、近年、東南アジア地域における重要な生産拠点かつ市場となっているタイを訪問しました。
参加者は、松葉満彦会長((株)福山産業翻訳センター 代表取締役社長)他14名。

タイ経済は、過去の通貨危機・洪水被害を乗り越え、その堅調ぶりが注目されており、また、タイに生産拠点を残したまま労働集約的な工程を周辺国に出す、「タイプラスワン」と呼ばれるサプライチェーンが現実化しつつあります。


ジェトロバンコク

 タイの人口は約6,500万人(ASEANの中でインドネシア、フィリピン、ベトナムに次いで4番目)、人口の約95%が仏教、その他イスラム教4%。多くの日系企業が進出しており、バンコク日本人商工会議所会員は1,458社、在留邦人数は約50,000人(アジアでは上海に次いで2番目。実際には約10万人が滞在しているとのこと)。
 2012年のタイ経済は、洪水後の消費や投資の増加などにより、GDP成長率は6.5%増となり、大洪水の影響により0.1%成長となった2011年から一転した。タイ経済が堅調に推移していることから、失業率は1%を切る水準で推移しており、自動車産業をはじめ、人手不足が深刻となっている。また最大の投資国である日本からの投資(認可ベース)は、前年より大幅に増加し、諸外国の対タイ投資のシェアの63.5%を占めている。
 2013年に入ると国内消費は税還付制度終了等の反動で急減し、輸出についても海外経済の減速およびバーツ高などを背景に弱い伸びで推移しており、経済成長は減速傾向にある。また、最低賃金の大幅値上げ、法人税・関税の減免等などの措置が受けられる海外からの投資恩典制度(BOI制度)の見直しが決定されており、今後の投資環境の変化が注目されているとの説明を受けました。



 
▲ジェトロバンコクにて






ホーコス マニュファクチャリング タイランド(株)

 福山市に本社のあるホーコス(株)のタイ現地方法人で、2011年10月に工場拠点開設。従業員17名。視察には、菅田社長が当研究会を出迎えていただきました。これまでタイでは、マシニングセンター( 自動工具交換機能をもち、目的に合わせてフライス、中ぐり、穴あけ、ねじ立てなどの主種の作業を1台で行うことができる数値制御工作機械)の治具の設計・製作、また営業およびメンテナンスをおこなっていましたが、今年度より新鋭機 縦型マシニングセンタNS70型の製造を開始し、タイ国内へは既に100台を設置しており、製造した製品はタイを含めたASEAN諸国やインドへも輸出。現在、既存工場よりバンコク市よりの郊外へ約10,000坪の私有地(民地)を取得し、来年夏、新工場での操業を開始するよう準備中との事です。


 
▲ホーコス(株)の現地法人
 来年、新工場で操業予定

  

タイ ニットウセイモウグローバルCo.,Ltd.

 福山市に福山本社・工場のある日東製網(株)のタイ現地法人で、ユニチカの子会社工場を購入し、2012年7月に設立。従業員220名(内日本人3名)。こちらの工場では、結び目の無い無結節網などの漁網製造・仕立て・販売をおこなっています。原料はタイ国内(東レ)より購入し、それ以外は日本から調達しており、出来上がった製品は、東南アジア、ヨーロッパ、北米・オセアニア地区へほぼ100%輸出されています。現地(従業員)人材の能力・意識、従業員の賃金上昇等、工場を稼動させる上での就労についても対策が必要と話されました。




 
▲日東製網(株)現地法人
 無結節網を世界各国に輸出





タイロングステイセミナー(含BNH病院・バンコク銀行見学)

 ロングステイコンサルタント(株)の佐藤 裕 氏よりロングステイに必要なビザの種類や申請資格、必要な書類、住宅の種類、医療機関の種類や特徴、銀行口座やATMカードの作り方等の説明を受けた後、実際に生活する上で必要な病院(BNH)と銀行(バンコク銀行)を見学しました。
 ロングステイを考える上で、タイは、仏教国であり、親日的であること、また物価の安さや医療水準が非常に高いことで知られており、ロングステイしたい国の上位(マレーシアに次ぐ2番目)に入っています。




 

 





終わりに

東南アジア有数の世界都市となった今も高成長を続け、日本を含む先進国から注目を集めて企業進出が続くタイの魅力は、整った工業団地などのインフラ整備や安価な労働力にあったのだと感じました。今後、タイプラスワンの動きが出始める中、タイとどのように関わっていくかで、日本経済も大きく左右されると実感しました。




文責:福山商工会議所 産業課 山本 博美