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平成21年度 国際ビジネス研究会ベトナム視察会報告


平成21年11月22日(日)〜26日(木)参加者14名で、ベトナム・ハノイ市やハロン湾を訪問した。

 近年ベトナムは、政府の積極的な外資導入政策による投資環境の改善や優秀な労働力の確保に加え、中国への一極集中投資のリスクを分散させ中国以外にも生産拠点を構えようとする「チャイナ・プラス・ワン」の動きなどを背景に、世界中から注目を集めている。そうした中、21年度国際ビジネス研究会の視察会として、ハノイ市・ハイフォン市を訪問した。

 まず、ジェトロハノイ事務所 酒井 仁司氏より「最近のベトナム経済の状況」について説明を受けた。現在ベトナムは8,400万人を超える人口を誇る。2000年以降、中国に次ぐGDP成長率を誇り、資本主義化とともに国営企業の民営化が進んでいる。

2007年WTOへ150番目の加盟国となり、法制度や投資、制度が整備され、外資の算入が増加している。この経済体制の転換はベトナムの市場開放と外資企業の自由な活動を新たに認めるもので最近のベトナムブームの大きな要因となっている。

 ベトナムは農業国で、労働就業率は約80%が第一次産業であり、その大部分は農業従事者となっている。それは長い間、社会主義にこだわり、外資企業の進出が遅れ、産業が発展しなかったことによる。このため、産業の発展に必要な素材産業が絶対的に不足し、輸入に頼らざるを得ない状況にある。これまでは産油国でありながら石油の精製所がなく、昨年初めて唯一の精油所が稼動した状況である。製鉄所も昨年初めて計画された状態である。しかし、アセアン自由貿易地域協定の進行により、当面はタイ、シンガーポールなど産業の発展した地域からの調達が活発化すると思われる。更に中国からの調達も可能となっている。

 ベトナムの二大都市ハノイとホーチミンからタイのバンコクへの東西回廊と、南部回廊が開通しベトナムからタイ、マレーシア、シンガポールへの陸送が動き出した。更に中国は広東省の広州からベトナム国境の友誼関を結ぶ高速道路の建設を急ピッチで進めている。その他中国雲南省の昆明からラオス、タイ、マレーシア、シンガポールに至る南北回廊の開通に力を注いでいる。これにより、中国とASEANの物流が構築され、中国南部とベトナムからミャンマーのモラミャンへ陸送により運びそこから欧州、インドへの船舶ルートが完成する。これはアセアン自由貿易地域協定を見越したボーダレスの物流ネットワークが整備することによるこの地域の発展を目指している。日本の物流企業も中国、ASEANの大きなビジネスチャンスを求めて、積極的に参入している。恐らく2015年までにはこの地域内での部材の調達、海外への製品輸出において大きな発展に寄与することが見込まれている。

 ベトナムが注目されている理由に、労働者の資質、低コスト、政治的安定等が挙げられるが実際はこれ以上に立地条件の優位性にある。将来、中国とASEANの経済の一体化は確実な情勢にあり、この中間点に位置するのがベトナムである。

 日本の大手企業は、技術力では優位にあるが、価格競争力で韓国、台湾、中国企業に苦戦している。大手の製品製造業の海外シフトは国内の中小企業の縮小におよび、中小企業でも生存を賭けたテーマになっている。
 次に、JVNET(株)〔五洋ベトナム〕を訪問し、代表取締役 グエン アン ズン氏より会社概要の説明を受けた。べトナムの勤勉で優秀な人材を通じて、関係各国企業との交流を深め国際社会に貢献し、技術者教育・紹介事業を行っている。2005年9月創立、従業員45人(日本人スタッフ5名)。主な事業内容は、技術者育成・紹介事業、研修生送出し事業、機械設計業務、国内貿易。日本の主な取引先企業としては、トヨタ関連企業、松下関連企業、三菱関連企業。現在、事前育成中研修生 80名、教育中技術者60名が訓練を受けている。2009年9月までの実績は技術者120名、研修生100名となっている。

 翌日、野村ハイフォン工業団地を訪問し、野村ハイフォン工業団地開発(株)代表取締役社長 湯元 英一 氏より説明を受けた。野村證券の関連会社、野村工業団地株式会社が70%、ハイフォン市が30%の比率で1994年に投資ライセンス取得、1997年に開所した工業団地である。ベトナム第3の都市ハイフォン市に位置し、ハノイ市内からは約85km、ハイフォン港へは15kmと物流に有利な立地条件を備えている。国営電力と自家発電所電力をはじめ、ベトナムでもトップクラスのインフラ設備が整っており、総開発面積153ha(東京ドーム約33個分)の団地には税関窓口、郵便局、銀行等各種サポート施設が設けられている。「初期投資コストをいかに抑えるか」というポリシーの下、「ワンストップサービス」機能で投資ライセンス取得等に関する相談やハイフォン輸出加工区委員会の支援による無料の人材雇用サポートも受けられるようになっている。2009年11月現在の進出企業数は、53社。中国地方からの企業は、福山市:ローツェ(株)、(株)コーコス信岡、広島市:(株)アスティ、岡山市:ナカシマプロペラ(株)。団地内企業従業員数は約2万人、平均年齢は27歳(日本は58歳)、定着率は7割、年間生産額は5億ドルとなっている。

 次に、エバ工業(株)ベトナム工場 ゼネラルマネージャー 山川 正宏氏より説明を受けた。野村ハイフォン工業団地へは、2004年5月本社より機械事業部が進出、従業員4〜5名でスタートする。ベトナム国内の優秀な学生を採用し、日本語で作業教育を行い、プログラミング技術、溶接技術を教え、日本と同等の機械を製造する。現在の従業員数150名(内日本人3人)。現在、溶接部門は拡充しており、将来的には機械・塗装・設計部門を増設する予定。ベトナム進出のメリットについては、人件費が安い。デメリットはベトナム人全般に道徳感に欠ける。全員日本語を教え業務に関しては通訳なしで対応。毎朝朝礼を実施し、道徳の啓蒙活動を実施している。将来的には、ベトナムを基点に事業活動を展開していくとのことである。

 今回訪問したベトナムは、同じアジアなのに、そこは異空間の世界であった。とにかく凄まじい大量のバイクが大通りを津波のように走る、その様にメンバー一同言葉を失った。「進出ブーム」と言われ、注目を集めているベトナムであるが、新たなビジネスチャンスの場としての考え方をより一層深める視察会であった。



ジェトロハノイ事務所 野村ハイフォン工業団地
COMA職業訓練センター エバ工業株式会社



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